インタビュー・成功事例

旅行業経営者インタビューや業績を伸ばしている旅行会社の成功事例をご紹介

“会社の価値観を統一する”ことで風土が生まれる。旅行会社は「儲かる体質」に変化しなければならない。

太平観光株式会社
代表取締役 北垣 繁様

東京都練馬区の太平観光(株)は地域密着53年の旅行会社。自社の理念と目指すべき方向性を見える形にした、『経営計画書』によって、社内の価値観を統一し、風土づくりの促進を行っている北垣社長に、今後の“強い旅行会社”に求められる条件を伺いました。(対談日:2015年10月19日)

太平観光という旅行会社はどんな旅行会社ですか?

昭和38年に創業した第一種の旅行会社です。

私で2代目、先代が創業した会社になります。

 

主に学校関係のお客差様に教育旅行を提供してきました。

今でも売上の、約75%を占めています。

 

それから地元発着の日帰りバスツアー、これが約10%。

海外旅行とインバウンド案件が約5%で、一般のお客様が10%程度ですかね。

 

 

ツアーの主なお客様ですが、練馬区の西半分、新座市の一部、西東京市の一部

これでざっくり直径5キロ程になりますが、これが弊社の商圏範囲になります。

 

これを“地元地域”と定義づけていますが、約40万人の居住人口がいます。

 

更に練馬区の人口自体は約72万人で、ほぼ島根県と同じくらいですから、

結構人口が密集している地域なんですね。

 

それに対して弊社のツアーにご参加いただいているお客様は年間で延1万人。

それには日帰りバスツアーも宿泊のご旅行もトレッキングツアーなどもすべて含めた延の人数になります。

 

ですから後39万人のお客様には、まだご利用いただける可能性があるんですね。

まだまだ可能性がありますね。

地域顧客向けの日帰りバスツアーはどういった位置づけなのですか?

創業以来ずっと教育関係の旅行を中心に取り扱ってきたが、

少子化が進む中で子供たちがどんどん減っていきました。

 

このままずっと教育関係の旅行のみに力を入れていても、衰退していくことはわかっていましたから、

その代わりとなる新たな柱を、高齢者のお客様向けにご提供できないかと考えたんです。

 

そこで、今の日帰りバスツアーを立ち上げました。

 

始めてもう15年ほど経ちますが、立上げの際は船井総研さんに

いろいろとノウハウを教えていただきながら進めていましたね。お陰様でうまくいきました。

 

実はそれまでも日帰りバスツアーは月に1本、営業マンが交代で担当するといった形で細々と行っていました。

当時は毎日の終礼で、「本日は申し込みが2件ありました!」(パチパチパチ)といった感じでしたね(笑)

 

新聞折り込みも行いましたが、1万5千部折り込んで申込み0ということもよくありました。

 

何とか拡大していきたいという想いから、行ったことが大きく2つありました。

 

(1)『手書チラシ』を作成すること。

(2)より商品数を増やすこと。

 

この2点に関して船井総研さんに指導いただきながら進めました。

その当時は半信半疑な上、折り込部数もさらに増やして7万部にするということでしたから

本当にどうなることかと思っていました。

 

しかしふたを開けてみれば、1日50件以上の申し込みが集まり、びっくりしたのを覚えています。

それから15年経ちますが、いまだにその教えを守って実行していますよ。

 

他の旅行会社さんはいろいろと販促の手法を変えていく中

ここまで変わらず同じ販促方法を続けている旅行会社も少ないと思います。

 

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最近ではこの自社ツアーに、バスだけでなく飛行機を組み込んだ宿泊ツアーの商品を入れてみたり、

中には『社長北垣が実際に行ったツアー』など、どんどん新しい企画を盛り込んでいっています。

 

今となっては本当に多くのお客様にご利用いただけるようになりましたが、

実情は、うちのツアー“にだけ”参加しているというお客様は少ない様です。

 

以前お客様に言われて印象的だったのは、

「宿泊は読売旅行さんで、日帰りは太平観光さんだね。」という言葉。

 

そこで弊社でも、宿泊のお客様をしっかり獲得できるようになろうと意識が高まり、

宿泊のツアーを増やすなど、これまで行ってこなかったことに取り組んでいます。

 

宿泊ツアーを増やしたことで、予想していなかった変化が現れたのですが、

それは何かというと、添乗で行く従業員が楽しく働いてくれるようになったということです。

 

 

地元地域発の日帰りツアーでは、行ける範囲が限定されてしまいます。

 

従って、ツアーの催行を重ねていると、何度も訪れた経験のある場所ばかりになってしまうんですね。

それはそれで、添乗員の専門性が高まって良いのですが、やはり飽きてしまうものです。

 

 

そこで宿泊を組み込むと、添乗員自身もこれまで行ってこなかった場所に

お客様を案内することになります。それが本当に楽しいみたいです。

 

 

太平観光の強みや、大切にしていることは何ですが?

弊社が大切にして実行していることの一つに『経営計画書』を作成する。というのがあります。

この経営計画書の中には、弊社のSWOT分析なども掲載されており、

いつでも社員が自社の強み等を確認できるようになっています。

 

この分析内容は、実際に社員の中から上がった強みや弱みなどを取りまとめたものですので

かなり現場感覚の内容になっています。

内容は必ずしも他社と明確な差別化になっているポイントばかりではありませんが

毎年微修正を繰り返し、その内容を社員と共に深堀しているという感覚はあります。

 

別に特別なことを行っているとは思っていません。

こういったことをしっかり形にして、見える形にしていることが大事だと思っています。

 

中小規模の会社さんでは、こういったものを作成して毎年社員に配っている会社さんなんて

おそらく1割にも満たないのではないかと思います。しかしこれが、会社の良い風土を作ってくれると知りました。

 

今までは作って配布するだけでしたが、近年はこの経営計画書を毎朝の朝礼で活用しています。

項目をあらかじめ設定し、社員全員で読み上げるんです。

これを継続して行ってきましたが、だんだんと浸透しているのが明確にわかるまでになってきました。

 

例えばこの経営計画書の中には「クレーム対応の方針」というのがあります。

クレーム対応の場合大きく

・会社の損害を最小限に抑えるという考え

・お客様の被害を最小限に抑えるという考え

この2つに分かれます。

 

これらはどちらを優先するかで、取るべき行動が大きく変わってくるんですね。

弊社ではお客様の損害を最小限に抑えることが優先なのですが

こういった方針を掲げているので、もし従業員がクレームを発生させてしまった場合でも、

一切責任を追及しないとしています。

 

その代わりにクレームと認識すべき出来事を、報告していなかった場合には厳罰があるんです。

クレームは発生していることに気付かないことが、最も怖いことですから。

 

ですから予め会社から、こういった基準で行動をしてくれと示していると、

それが社内に浸透した時に大きく組織力も高まることを実感しました。

先日もある社員に、このクレームの方針の話をしたところ、

「社長何おっしゃるんですか、毎朝確認しているのでわかってますよそんなことくらい!

そう言われてしまいました。その時にやはり経営計画書に落とし込んでいる効果を実感しましたね。

 

やはり社内で価値観を一致させることは、非常に重要だと感じました。

 

また経営計画書の中には、『長期事業構想書』という項目もあります。

その中身は、国策や観光立国への動きも含めた旅行業界の動きと弊社の長期的な方針が記述してあります。

 

中小旅行会社の我々からすると、確かに厳しい現状はありますが、

観光全体でとらえると、追い風が吹いているということです。

 

あるいは、今はWEB中心の旅行会社も増えてきて、従来までの旅行会社の存在意義というのが薄れつつある。

そういったことも含めて記載されていますね。

 

これは本当に会社の価値観を統一するのに良いですね。

 

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これから太平観光が力を入れたいことは?

やはりインバウンドというテーマですかね。

 

2~3年前まではインバウンドなんて言葉ほとんど聞きませんでしたよね。

それが今では電車の動画広告の中でも、どんどん使われているのを見たとき

このインバウンドという市場の認知度が急速に高まっていることはわかります。

 

やはりこれだけ訪日観光客が増えると無視することはできませんからね。

弊社でも訪日観光市場へのノウハウは多少ありますので、それをうまく伸ばしていきたいです。

今後の旅行業界は、どんな変化をしていくでしょうか?

旅行業界全体でとらえると、今までのような手数料ビジネスだけでは本当に厳しいでしょう。

チケットの手配、宿の手配といった素材販売の時代は終わると思います。

 

これからはその素材をどのように活かすか、料理するか、おいしく加工して提供できるかが問われます。

それはどの旅行会社さんもわかっていることでしょう。

 

そうなると弊社のようにツアーを作り続けているということは、いずれ強みになっていくと思います。

私もまだ若い時はよくわかりませんでしたが、歳を重ねるとこういったツアーは本当に便利だなと感じます。

 

現地であれもこれも自分で行わなくてはいけないというのは、結構面倒だったりしますよね。

そういった点ではシニアのお客様には使いやすい、旅行しやすい環境を提供できている。

 

団体でいく個人の旅行なんてどうなんだろう?と私自身も思っていましたが、

この年になると、なんとなくこのツアーの良さを理解できるようになりました。

 

それにWEBを使う流れは活発になっていますが、自分でWEBを使って

一番費用対効果の高い素材を見つけるのも、結構な時間がかかったりします。

 

そういった意味では、この手のツアーはなくなることはないと感じています。

 

後は弊社の話で言うと、学校関係の取り扱いに関してです。

 

これからマーケットが小さくなっていくとは言っても、

うちが業界全体の80%のシェアを取っているなら話は別ですが、実際はほんの1パーセントもない。

 

ですから小さくなっていくマーケットの中でも、

専門性を突き詰めることで、シェアを伸ばしていくという発想は持っています。

 

競合の会社さんもいましたが、最近はぶつからないなあと思っていたらかなり衰弱されていることを知りました。

そう言った現状をふまえても、生き残ればそのマーケットで業績を伸ばすことはまだできると思っています。

 

 

なので注力すべきポイントは2つあって、

従来からあったような見学などの簡単な仕事であれば、販促に力を入れれば伸ばせる。

 

その場合、価格力での勝負は必須になりますけどね。

その中でもお客様との接触頻度を高めることで、競合には負けないようにカバーできると思います。

 

 

それからもう一つは企画力です。より近いところでお客様を飽きさせない努力が必要です。

バス料金の改定があってから、運行時間と距離の制限が厳しくなり、

観光地3~4か所回って帰ってくるという内容でも、企画にも限界があります。

 

そう言った意味で、新しい企画力が必要になってくると思いますし

お客様に合った仕様にして、旅行を提供するという努力も必要。

 

ペットボトルの中身は一緒でも、いろんな用途に合わせた容器で販売しているのと同じで、

旅先は同じでも、そのお客様にとって使いやすい内容に加工してあげるということです。

 

バスの仕様一つとってもそう。

 

そう言った動きも活発になりつつあるのではないかと思いますし、

お客様もそういったことを含め、新しい企画内容を求めていると思います。

 

それと添乗員の質ですね。これで大分左右されると思います。

 

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これからの旅行会社にとって、必要なことは何でしょうか?

昨年船井総研さんの「旅行経営研究会」にゲスト講師としてご講演いただいた

ホワイトベアファミリーの近藤社長の話が、今でも非常に印象に残っていて、

 

それは何かというと、『旅行会社はもっと儲けなければいけない。』こう仰ったんですね。

 

ご存知の通り、旅行業界自体が儲からない体質である。

利益率が低いですから、従業員にとっても仕事量に対してのリターンが小さいと思います。

 

やはりこれを改善しなければ旅行業界はよくなっていかないでしょう。

 

“旅行が好きだからこの仕事が好きだから“という理由で務めている人間がこの業界には多いと思いますが

だからこそ、それに見合った対価が得られる環境を作ってあげないといけません。

 

やっぱり人並み以上の給料を上げたいですし、そういう風になっていかないといけないと思います。

 

そこにアプローチしていくとなると、大切なことは、“やらない仕事を決める”ということだと思うのです。

 

今まで行ってきたので、何の疑いもなく今も続けて行っている仕事ってたくさんあるんですね。

 

例えばチケットの手配もそうです。

 

仮にパートの方にチケットの手配を行っていただいたとしても、

一時間当たりの利益で考えた時に、時給分すら稼げていないことはよくあります。

 

こういった業務内容は、必ず見直さなければいけません。

これからの“強い旅行会社”に必要な条件は?

震災の時に感じましたが、観光業はそういったアクシデントに非常に弱いです。

あの当時、観光バスはまったく動かなくなった。

 

しかしその時、輸送バスだけはどんどん稼働していたんです。

その結果今はもう観光をやめて、輸送にシフトしてしまったバス会社さんもたくさんいます。

 

つまりそのサービスが「生活にまで浸透しているかどうか」ということなんです。

 

うちの場合は、震災の際にあまり影響を受けなかったのが教育関連の旅行でした。

何でも主と従がありますが、教育旅行の場合は、主が教育で、従が旅行になります。

 

最初の切り口が観光であれば影響を受けてしまいますが、

教育旅行の場合は、最初の切り口が教育になります。

 

教育があるから移動が発生しているので、主は教育ということになります。

従って、観光の需要の変化には、あまり流されることがなかったということなんです。

 

旅行会社が生き残るための最小限の基盤を作っていくには、

そう言った“テーマ”や“軸”が必要ですし、その土台をつくることが必要だと感じました。

 

後は事業の柱をいかにして複数用意するということですね。

 

今の旅行会社にはなかなかそこまで着手できないと思いますが、

今だからこそ多くの柱を作っておくべきです。それが後々のリスクを回避することに繋がると思います。

 

 

そう言った意味では、船井総研さんの旅行会社向けの経営研究会はよいですね。

 

元々旅行業界は、まとまりがある業界ではありませんが、

一人で考えて経営を行っていては、トレンドからズレてしまうことはよくあります。

 

経営者である自分は、いろんな判断を行っていかなければいけませんので、

より多くの正しい情報を持っておくことが大事なんです。

 

ですからそういった情報を豊富にお持ちである、例えば船井総研のコンサルタントさんの話を聞いたり

この研究会に参加している、他の旅行会社さんの事例や現状を聞いたり共有できることは、本当に重宝しています。

 

いま自分が行っている経営の方針や今後行っていく施策が正しいかどうか、間違っていないかどうかを

それらの情報を参考にさせてもらいながら、判断することができています。

 

一人で経営を行っている場合と比較すると、取り入れることのできる情報の量が、圧倒的に増えますからね。

 

もし近隣の会社さんがいれば、全てを見せ合うことなんてできませんが、

商圏がかぶっていない全国各地方の旅行会社の経営者が集まっているので、情報もどんどん開示できる。

 

実際に先日、メンバーのある旅行会社の社長さんが、弊社の朝礼を見学に来られました。

またある時は、弊社のパンフレットを取りにきたりまでしています。

 

チラシなどの作り方も、良いものは参考にして、マネしてりしています。

そうやって私も他の会社さんの取り組みを参考にさせてもらっていることもあります。

 

前回の、各会社の粗利率を開示して議論した内容はよかったですね。

自社が一番低いかなと思っていましたが、弊社よりも低い会社さんもいました。

粗利率をどうやって高めていくかは必須のテーマです。

 

今後やってみたい議論としては、各会社さんにはどんな手当があるのか。

あとは、有休の消費状況がどうなっているのかなど、そう言った話はなかなか聞くことができませんが、

会社を経営していく上では非常に重要な項目です。

 

そういった業務以外のマネジメント面の情報交換を活発に行っていけたらと思います。

 

話を戻すと、これからの強い旅行会社には、様々な角度からみて

「儲かる体質」を作っていくことが必要だと思います。

 

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